完食がゴールじゃない!管理栄養士が伝える“食べる力”を育む、親と先生のチーム連携/大橋さやこ
小学校1年生、給食でがんばる子どもに…親が感じた声かけへの違和感とは

小学校に入学してはじめての給食。まだ慣れない学校生活のなかで、子どもたちは毎日がんばっています。
そんな中、先生から「全部食べようね」と声をかけてもらう場面もあるでしょう。一見すると励ましのように感じるこの言葉。でも、親として少しモヤモヤする…そんな気持ちを抱いたことはありませんか?
「苦手なものも一口は食べよう」「全部食べ終わるまで席を立てない」
——そうしたルールや指導が、子どもにとってはプレッシャーやストレスになることもあります。実際に、「給食が苦痛になってきた」「食べるのがつらいと言い始めた」という声が、私のもとにもたくさん届いています。
家庭では「楽しく食べる」ことを大切に、食べることは、本来“がんばる”ものではなく、“心地よく感じられる時間”であってほしいと願うからこそ、ママとっては、そうした声かけに違和感を覚えるのも自然なことですね。
文科省も「無理な給食指導はNG」と明記。ママの違和感は間違っていない

文部科学省が発行している『食に関する指導の手引―第二次改訂版―』には、給食指導を行ううえでの大切な配慮が明記されています。
たとえば、次のような内容です。
- 「過大な重荷にならないようにする」
- 「高い倫理観とスキルを持って」
- 「保護者をはじめ関係者の理解を得て、密に連携を取りながら」
- 「確実に行動変容を促すことができるよう、計画的に」
- 「安易な計画での指導は、心身の発育に支障をきたす重大な事態になる可能性があることを認識する」
これらの言葉からもわかるように、子ども一人ひとりの体調や発達段階、苦手の背景に寄り添うことが、現代の学校給食指導の基本方針なのです。つまり、もしあなたが「うちの子には無理させてほしくない」「この指導、ちょっと気になるな」と感じていたなら、その違和感は決して間違いではありません。
こうした国の方針を知るだけでも、「私だけが気にしすぎているのかな…」と悩んでいたママの心が、少し軽くなるかもしれませんね。
伝え方ひとつで変わる。先生と連携するための“やさしい言葉”の選び方
先生に何かを伝えるときは、「やめてください」と否定するような言い方ではなく、「わが家ではこんなことを大切にしています」と共有するスタンスを取るのがおすすめです。伝え方ひとつで、子どもを真ん中に置いたあたたかい連携が生まれます。
たとえば、こんなふうに伝えると、先生も理解しやすくなります。
- 食べられない理由:「どうしても受けつけられない感覚があるようです」
- 家庭での工夫:「苦手なものも、一緒に料理して食卓に並べるようにしています」
- これまでの経験:「“食べなくても大丈夫”という雰囲気のときは、少しずつ食べられるようになりました」
- 本人の気持ち:「プレッシャーを感じると、食欲がなくなってしまうようです」
「困っているので、力を貸してもらえませんか」というお願いの姿勢で話すことが、先生との信頼関係を築く第一歩になります。
まとめ:先生と一緒に、子どもの“食べる力”を育てていこう
家庭と学校、それぞれに大切にしている想いがあるからこそ、すり合わせは簡単ではありません。けれど、「モヤモヤを抱えたままにしないこと」が、子どもの心と体を守る大きな一歩になります。学校と家庭がひとつの“チーム”になって、「食べるって楽しいね」と感じられる時間を、少しずつ一緒に育てていきましょう。
担当管理栄養士:大橋さやこ
参考文献
- 食に関する指導の手引‐第二次改訂版‐,文部科学省