妊娠糖尿病経験 管理栄養士が実践!糖尿病予防のためのストレスケア/矢村千紘
こんにちは。糖尿病療養指導士12年目の管理栄養士、矢村千紘です。
今まで、糖尿病の発症や血糖コントロールに影響するのは、肥満や運動不足、食生活の乱れが中心とされていましたが、そこに加えて「ストレス」の影響が大きいことも分かっています。肥満のない人であっても仕事のストレスが大きい人は、2型糖尿病の発症率が上がっていたのです。
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2022年8月31日
前回のコラムでは、睡眠が糖尿病予防にも有効であることをお伝えしました。睡眠の質を向上させることは、血糖値の改善だけでなく様々なメリットがありますが、仕事や家族の事情で睡眠が確保できないことも日常ではよくあることです。
今回は、睡眠以外の休養で血糖値に好転的な影響をもたらす方法をお伝えします。
ストレスと血糖値
人間関係や仕事のプレッシャー、情報過多、長時間労働や過度なトレーニング、騒音や不快な暑さ寒さ、住宅や生活用品、食品に含まれる化学物質、風邪や感染症など、小さいものまであげればキリがありません。私たち現代の生活では、そのストレスに気づかず慢性的に疲れが溜まっていくことが問題になっています。
ストレスは、短時間であれば困難に立ち向かう意欲や力となって良い方向に作用することもあります。しかし、ストレスを感じると交感神経が活発になるため、血糖値を上昇させる作用を持つグルカゴン、アドレナリン、甲状腺ホルモンなどが増えます。また過剰なストレスにより分泌量が増えるコルチゾールも血糖値を上げる作用を持つホルモンです。このように、過剰なストレスや、長期間のストレスは、自律神経やホルモンに影響を与え、疲労や疾患へ繋がります。
今まで、糖尿病の発症や血糖コントロールに影響するのは、肥満や運動不足、食生活の乱れが中心とされていましたが、そこに加えて「ストレス」の影響が大きいことも分かっています。肥満のない人であっても仕事のストレスが大きい人は、2型糖尿病の発症率が上がっていたのです。
血糖値を下げるホルモンがインスリン1種類なのに対し、血糖値を上げるホルモンは前述したように多数あるため、ストレスケアや疲労の回復を上手にしていくことが大切になってきます。
ストレスケアのための休養
●「消極的休養」
じっと体を休める休養の代表が前回お伝えした「睡眠」ですが、それだけではありません。最近では呼吸によるリラックス効果も注目されています。
深くゆっくりとした呼吸は、副交感神経を優位にし、さらに一定のリズムで繰り返されるとリラックスモードの脳波であるアルファ波を高め、同時にストレスホルモンのコルチゾールを低下させます。
呼吸は、いつでもどこでも、自分が意識することで整えることができます。緊張やストレスを感じた時だけでなく、仕事や育児の合間にも深い呼吸をぜひ意識してみましょう。
●「運動型休養」
適度に体を動かすストレッチや、ゆったりとしたヨガ、散歩などは、老廃物の排泄や新陳代謝を促すことで心身の活力を養います。疲労回復に有効なだけでなく、インスリンの効きや筋肉でのブドウ糖の消費を高めるため、直接的に血糖値の改善にも役立ちます。
●「親交型休養」
人との交流や、自然や生き物との触れ合いも心身の疲れを癒す効果があります。心置きなく話せる友人や家族と時間を過ごすと心が晴れやかになったり、森林浴やペットとの触れ合いで気持ちが穏やかになったりした経験があると思います。これも立派な休養です。
他にも、編み物や絵画など黙々と何かを創作する「造形・創造型」の休養もあります。料理が気分転換になるという人もいますが、私もひたすらキャベツを千切りにしたり、餃子を黙々と包んだりする作業は、気分がスッキリするなと感じています。料理がストレスになることもありますが、捉え方を変えて「気分転換のため」として健康的な食事作りに取り組むと一石二鳥かもしれませんね。
いかがでしょうか。忙しい毎日かと思いますが、ふとした時に自分の心や体に意識を向けて、まずは疲労やストレスを自覚すること、そして気づいたらすぐにケアをしてあげることが、糖尿病予防の点からも大切です。ケア方法は、どれかひとつにこだわるとそれもまたストレスの原因となってしまうため、選択肢をたくさん知っておき、自分の心身の状態や、環境に合わせて取り入れることをお勧めします。
担当パーソナル管理栄養士:矢村千紘
担当パーソナル管理栄養士:矢村千紘
参考文献
- 村田正明・片野秀樹「休養学基礎」MCメディカ出版(2021.7.1)
- キャサリン・ウィットロック、関谷冬華(訳)、金子(大谷)律子(日本語版監修)「とことん解説人体と健康ビジュアルホルモンのはたらきパーフェクトガイド」(2021.5.17)
- 仕事のストレスが糖尿病リスクを45%上昇させる ストレス対処が必要, 糖尿病ネットワーク,(2022.8.13閲覧)
- ストレスが糖尿病治療を難しくする ストレスをコントロールする方法,糖尿病ネットワーク, (2022.8.21閲覧)
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